【ロングインタビュー】パシフィックカップ・熱気球日本選手権の2冠に輝いた上田諭選手に聞く「チャンピオンへの道!」


2017佐賀インターナショナルバルーンフェスタにて、第31回パシフィックカップと第34回熱気球日本選手権の2冠に輝いた地元佐賀のパイロット 上田 諭 選手に「チャンピオンへの道!」と題し、5日間の上空で繰り広げられた熱戦を振り返っていただきました。


- 改めまして、上田 諭選手(以下、上田選手)、「第31回パシフィック・カップ」と「第34回熱気球日本選手権」の優勝おめでとうございます!表彰式から一週間ほど経ちましたが、優勝のご感想をいただけますでしょうか。


- 上田選手:日本選手権!!勝ちましたー!

今回、同じチーム (The Aero Libertines) から上田 諭(No.56)、飯盛 一保(No.31)の2機体制で挑んでたんですよ。パシフィック・カップと熱気球日本選手権のタイトルを同時に獲ることができましたが、前に唯一同時にタイトルを取ったのが7年前の飯盛パイロット。 続けてタイトルを獲れて嬉しいっす!


- 周囲の方の反応はありましたか?


- 上田選手:昨年の世界選手権は日本代表の一人(佐賀県唯一)という紹介だったのですが、今回で日本一になりました!選ばれたってことよりも一番になったということの方が反響は大きいですね。ほんとちがう。


- ご家族の方からは?


- 上田選手:会場にも見に来てくれていて目の前でターゲットにマーカーを投げ込めました。喜んでもらえたみたいです。



- 上田選手と言えば、地元佐賀を代表するトップパイロットでもありますが、昨年開催された2016佐賀熱気球世界選手権を含め、ここ数年は県外や海外の選手が優勝されていました。先ほど上田選手が言われていたとおり、地元佐賀の選手の優勝は遡ること2010年の飯盛選手。

日頃練習フライトを重ねる佐賀の空で他地域のパイロットが活躍するのをどう感じていましたか?


- 上田選手:地元勢は悔しがってますよ!佐賀の大会は地元勢が勝つにはちょっとしたコツが必要でして、、、


- コツ?


- 上田選手:佐賀平野では、夏の田植えから10月の稲刈りまで、農家のみなさんにとって大事な作物が育つ時期。佐賀エリアはオフシーズンに入ります。稲刈り後、佐賀は秋のフライトシーズンが始まりますが、10月末、すぐに佐賀の大会となります。

大会に向けてしっかり飛んで実戦感覚を養うために、夏のヨーロッパに海外遠征に行ったり、秋の他のエリアの大会に参戦したり、稲刈りが佐賀より早い九州内のエリアに通ったり、各々工夫して練習しています。



- なるほど。地元の選手が必ずしも有利とは限らない大会日程っという訳ですね。


- 上田選手: 先日の表彰式の際、山口佐賀県知事より、「唐津くんちとバルーンどちらも楽しみたい。日程が重なっていることで相乗効果もあるが、どうにか日程を工夫できないか」とのスピーチがありました。

以前の開催日程であった11月末にバルーンフェスタの開催が移ると、地元選手としては練習期間が確保されてより良い成績につながるのでは、と期待できます。


- それでは、今年の大会を振り返ります。

今年の2017佐賀インターナショナルバルーンフェスタのパシフィックカップ(兼日本選手権)では、5日間で合計15タスクが実施されました。

各タスクの最高ポイント(pt)が1000ptなのですが、上田選手は15タスクのうち、12タスクで950pt以上のハイスコアを叩き出しています。本人を前にして言うのは大変失礼なのですが「神がかり的」なスコア!

やはり、大会初日のタスク1 PDG(パイロット・デクレアド・ゴール)にて最高得点の1000pt(ゴールとの距離38cm)を叩き出して波に乗ったのが大きかったですか?

(前半から圧倒的なスコアで完全優勝を果たす)


- 上田選手:今回62機でパシフィックカップを競いました。1タスクの満点は1000pt。どんなに素晴らしいパフォーマンスをしても1500ptや2000ptにはなりません。結果が1mでも他の選手より一番近ければ1000pt。結果が1kmでも他の選手より一番近ければ1000pt。


順位が下がるごとに点数は995,900,800ptと下がります。つまり、何mという結果だから何ptではなく、他の選手との相対的な結果でptが決まります。


確かに今年は950pt以上の得点が続きましたが、マーカーを投げた感触としては、去年の世界選手権の方が調子良かった感があります(周りの選手が上手すぎてつられて数十cm連発!でも一番良い結果の人はもっと近くに投げている)


- そうだったんですね! 確かに去年の世界選手権はターゲットが投下されたマーカーで見えずらい感はありましたね。


- 上田選手: 今年の初日は天気が良すぎて10キロ先のターゲットのある方向へ行く風が時速3km〜5km。歩いた方が速いです。同じ高さに居続けるようにバーナーを操作して以下3点セットとの戦い。2時間も!


- 2時間も!?

・行きたい方向の風が弱まる
・時間切れ
・集中力切れ


その末にターゲットにたどり着いてマーカーを中心に投げこむ。他の選手がどんだけ良い結果かは飛んでいる最中はわかりませんが、まずは1タスク目、やれることはやった、との気持ち。波に乗るというよりいい流れに踏みとどまった。そんな感じ。初日朝残り2タスクも同じような感じ。


- そして、大会2日目午前の競技は、task6のJDG(ジャッジ・デクレアド・ゴール)が佐賀市街地を超えた佐賀市南東エリア(北川副)に設置されたタスクとなりました。河川敷からは小粒のようしか見えなかったのですが、遠目で見ますと各パイロット、上空に広く散っており、アプローチに苦戦しているようでしたが、上田選手はそこでも950pt以上のスコアでまとめられていますね。



(大会2日目午前の競技のタスクシート)


- 上田選手: 佐賀市街の東側には年に数回しか行かないので、久々の景色は新鮮でした。

この日の競技がPDG(離陸前にパイロットがゴールを宣言する)、JDG(競技委員長が設定)、PDG(離陸前にパイロットがゴールを宣言する)とあり、とくに3つ目が難関で、河川敷から市街地を超えて10キロ以上先に目指すゴールを選べとありました。


その前に2つのタスクをこなすことから、(じっくりターゲットに向かって時間を費やす)到達時間かかるといった理由で、時間の経過により風が変わり難易度が増すのでは?との予想。幸いシンプルな風の傾向のままでしたが、ただ近づくだけではない風の傾向の読み合いもうまくこなせました。



- 大会3日目(11月3日(金・祝))は、今年の大会で初めの休日ということもあり、早朝より沢山の方が嘉瀬川河川敷に足を運ばれていましたね。その中で行われた会場外からの離陸から会場内ターゲットへ接近するtask8 FIN(フライイン)。離陸したのは会場から北西方向でしたが、一旦、河川敷の北東側に位置どり、それから北東風に乗ってのアプローチ。フライトプランどおりでしたか?


この日は3km先から離陸してFIN(会場を目指し)、その後FONが2つ(飛びながら次に狙うゴールをパイロットが選択する)先に書いた時間の経過とともに風の傾向も変わるため、シンプルにサクサクタスクをこなしていくことが高得点の近道。


「3kmをいかに早く駆け抜けるか」という点では、上空1000mの北西からの風が一番スピードがあり、上空300m付近の北東からの風が一番角度が安定していて、スピードがあったのでその2つをベースに組み合わせました。


- 風のスピードと角度。


- 上田選手: この日は東西南北全ての風向きが各高さに存在したので、一見飛びやすそう、近づきやすそうなのですが、風の傾向が変わらないうちに(上着脱ぎたくなるくらい暖かくなると風の変わり目)サクサクタスクを進めること。これがポイント。たくさん風があるから航路を修正しまくると、気づいたら想定していた風の角度やスピードが変わってしまう、ということも。


- そして、スルスルスルっとローンチエリアに侵入してきて、見事、ターゲット(青)にオンターゲット! あの時、上田選手がターゲットに近づくにつれ会場が静かになって...オンターゲットと共に歓声が湧いたんですよね!私はそのとき、ターゲット付近で見ていたのですが鳥肌が立ちました。


(task8 河川敷に設置されたターゲットへのマーカー投下 8分35秒過ぎ)

- 上田選手:去年は「サトシ」コールがかなり手前から沸き起こったのに今年は観客の緊張感が伝わる静かさでしたね。オンターゲットでどっと湧くのもいいんですが、好みはコールがある方です! あと、ランドリーさん(会場アナウンサー)の「はよはよ!」って急かすのはNGですよ!


- (笑)そういえば、今大会に久しぶりに出場したアメリカのオーエン・キオン選手からも、「急かすのはやめてくれ。静かに見守って欲しい。」っと頼まれたと、ランドリーさんが会場でアナウンスされていましたね(笑)


- さて、大会3日目の午後から4日目(終日)は風で全タスクがキャンセル。上田選手はその間、どう過ごされました?


- 上田選手: 連休になって遠方のチームメンバーが集まっていた&翌日の悪天が確実だったのでわいわい飲み会をやっていました。リラックス。


- 残る5日目最終日の午前の競技を前に暫定首位。内心、「このまま、天候不良で競技がなければ優勝なんだけどな」っとは思いませんでしたか?私だったら100%思う(笑)


- 上田選手: 去年の世界選手権は毎日4〜5タスク、30タスクを超える競技を繰り返して選手として競技をこなせる充実感がありました。 今年は昨年と比べるとタスク数がどうしても物足りなくて・・・(笑)


点数よりもっと飛びたさが勝ってます。


- 5日目最終日の午前の競技(最終タスク)は、なんと1フライト5タスク! 正直、私は最終日なので「多くても3タスクくらいかな?」っと勝手に思っていたのですが(笑)、5タスクもあれば、十分逆転可能なタスク数ですよね。ブリーフィングでタスクシートを見たときの感想は?


- 上田選手:(笑)
やっと待ち望んだ設定になった!とテンション上がりました。思い切って楽しんでやろうとポジティブな感じ。
セーフティーリードありますしw


- そして、最終日のタスクが始まり、まずは河川敷からの一斉離陸。緊張感高まる中、私ども含め、報道機関等が離陸時の様子をカメラに収めようと大勢囲んでいましたが気づいていましたか?(笑)


- 上田選手: 佐賀県がイベント企画していたポケモンのロケット団のRシャツを極秘に入手していたので。いかに良く映れるか、考えていました。 ネットチームからも撮りに来てくれてました!



- 諭(サトシ)と言えば、ポケモンの主人公ですよね?...どちらかというとロケット団に入っていけないのでは...ゴニョゴニョ(笑)


- 最終日の一発目のタスク、task11 PDG(パイロット・デクレアド・ゴール)でまさかの「大外し」(468pt)をしてしまいましたがその時の心境は。


- 上田選手: 2位と1000pt以上離れていての最終日なので、こちらが5タスクで4000ptを稼げば2位の相手が全て1000pt集めても勝てるんですよね。 「大外し」といってもこの時の結果4mなんですよ。全然失敗した感は無いし、あぁ、他の選手が頑張ったんだな、はい次!という感じ。


- なるほど。上空では続くtask12 JDG 〜 task15 FON をうまくまとめられ、タスクフィニッシュ。その時点ではまだスコアは確定していませんが、その時の心境を覚えられていますか?


- 上田選手: すでに午後のキーレースでいかにしてロケット団シャツを着て目立つか、そのことについて集中的に議論を重ねていました。


- そこですか!(笑)



- 上田選手: 2015年にお客さんとハイタッチしたり、ネットチームのコンテナめがけてアフログラブレースを敢行していたので、それに勝るアイデアは何か、と。


- さすが上田選手、強いだけじゃ終わらない(笑) そして、最終日の午後3時。スコアが確定し、パシフィックカップと熱気球日本選手権の2冠達成!


- 上田選手: セーフティリードがあったので、ドキドキや涙涙というわけではありませんでしたが、ようやく日本チャンピオンだー!って感じでしたね。


- 表彰式のスピーチでも触れていましたが、同世代で海外大会を含めこれまで勝ったことのない、2位のロカス選手(リトアニア)を打ち破って優勝したのが嬉しかったっと言われていましたね。


- 上田選手:世界チャンプの(藤田)雄大もすごいですが、ヨーロッパチャンプで世界戦も安定してトップ10を続けるローカスも強いです。 5年前に初顔合わせ以来ライバル視していて、世界戦含め5度戦ってようやく勝てたので嬉しかったですね。


- どうでしたか、優勝カップを壇上で高らかに掲げてみて?



- 上田選手: 気持ちいいですねー。壇上からみなさんの顔が良く見えました。


- 今回、熱気球日本選手権を優勝したことで、来年、オーストリアのグロース=ジークハルツで開催される「2018熱気球世界選手権」への切符もほぼ手中に納めましたね(正式には、大会前に日本気球連盟が代表選手を決定)。2014ブラジル世界選手権から始まり、2016佐賀に続き、3度目の世界選手権となりますね。


- 上田選手: 個人で3度目、チームとしては2012飯盛(アメリカ)から4度連続です。 メダルが欲しい!


- 今年、そのグロース=ジークハルツで行われたプレ大会では、広大な競技エリアで、日本ではまず行われないようなタスクが設定されていたと伺っています。すでにジュニア時代から多くの海外の大会に参加されている上田選手ですが、日本とはどこが違いますか?


- 上田選手: 佐賀をはじめ日本の風は「細くて変わりやすい」と言われますが、広大な大陸を舞台にしたエリアでは「高い高度」「速い風」「長距離」の要素が基本ですね。ダイナミックでアグレッシブ。スピーディなフライトが楽しめます。 今度のオーストリアでは競技設定としても、時間や空間をフルに使ったクリエイティブさが求められるタスクが組まれます。風を読む。ターゲットに「寄せる」技術に加えて 風の「高さ」「速さ」「角度」飛行する「時間」を組み合わせるスキルが求められます。すでに過去のタスクの分析等、対策を練ってますが、、大会がめっちゃ楽しみ。


- 2018熱気球世界選手権でも上田選手の活躍に期待ですね。では、最後に、上田選手より今後の目標と、35億...ちゃう、多くのバルーンファンの皆さまに一言お願いいたします。


- 上田選手: 去年の世界選手権最終日に、会場に気球がたくさん連なって飛んできてターゲットがマーカーの山になっていたのを写真や動画、現地で見た方も多いと思います。

(2016佐賀熱気球世界選手権 大会最終日のフライイン タイムラプス映像)

- 上田選手: 世界トップレベルの凄腕の選手が集まるとそんな光景も生まれます。 風を読んで、風に乗れればターゲットに行けたのに、去年のように上手い選手が集まると、最善の風の道をめがけて四方八方からポジション争いが繰り広げられます。ドキドキワクワク、めっちゃ声出ます。


選手としては、めっちゃ上手い選手たちと痺れる戦いがしたくて、佐賀がトップパイロットに来てもらえる大会になってほしいと思います。たくさんの気球が集まる大会から、たくさんの上手い選手が集まる大会になるために!


今年はGoProでたくさんの競技シーンを撮影しました。 皆さんにもご覧いただいて、来年は会場でマーカー投げを失敗したら「やったー」ではなくヤジが飛ぶような(笑) オンターゲットの感動を分かち合うためによりシビアに選手を応援していただけたらと思います!


(映像制作 グルーブースト株式会社 - Groovoost Inc.)

- 上田選手、ご協力ありがとうございました!上田選手は、11月24日(金)〜26日(日)に開催される"鈴鹿バルーンフェスティバル2017"や、嘉瀬川河川敷で開催される「SAGAバルーンチャレンジシリーズ」にもご参加予定ということですので、お近くの方は日本チャンピオンのフライトをぜひ間近でご覧ください!


(聞き手 / 公式ネットチーム 帆秋 圭司)

最終更新日 2017年11月22日

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